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EC Profit Design Column

売上はあるのに、利益が残らない人へ

「売れているのに赤字」はなぜ起きる?
ECサイトを作る前に知っておきたい
“儲かる価格”とは

「売れているのに赤字」はなぜ起きる? ECサイトを作る前に知っておきたい“儲かる価格”とは
この記事でわかること

1注文でいくら残るか広告費はいくらまで使えるか(CPA)何件売れば黒字かROASの正しい見方必要販売価格の逆算

MADE IN CREW 代表取締役 村田修平

Author

村田 修平株式会社MADE IN CREW 代表取締役

この記事の結論

ECの商品価格は「原価の2倍」では決められません。まず1注文で広告を引く前にいくら残るかを出し、そこから使える広告費(CPA)・黒字ライン・必要販売価格を逆算します。判断の最終基準はCPAやROASの良し悪しではなく、月間でいくら利益が残ったか。まずは主力商品を1つ選び、価格・原価・送料・広告費・固定費を書き出すところから始めましょう。

「ECサイトを作れば、あとは商品を売っていけばいい」。これからネットショップを始める方の中には、そんなイメージを持っている方もいるかもしれません。

しかし、ECでは少し怖いことが起こります。

商品は売れている。売上も増えている。それなのに、なぜか利益が残らない。そんな状態です。

私自身、ECサイトや購入型LPの制作相談を受ける中で、「商品はいくらで売ればいいですか?」「広告費10万円を使ったら、どれくらい売れそうですか?」「この商品って、何件売れば黒字なんでしょう?」といった相談を受けることがあります。

ECサイトのデザインや広告を考える前に、実はここを整理しておくことがとても重要です。なぜならECでは、販売価格から、

  • 商品の原価
  • 送料
  • 梱包費
  • 決済手数料
  • 広告費
  • 月額システム費や人件費などの固定費

が引かれて、最後に残ったものが利益になるからです。つまり、ECの商品価格は「原価の2倍くらいで売ろう」だけでは決められません

この商品はいくらで売ればいいのか。広告費はいくらまで使えるのか。何件売れば黒字になるのか。

この記事では、難しい会計の話はできるだけ避けながら、これらを自分で考えられるようになるところまで解説します。

前提

記事内の金額は理解しやすくするための税抜・仮定例です。特定の商品や企業の実績、平均値ではありません。実際には返品、クーポン、税区分、各サービスの手数料なども自社条件に合わせて確認してください。

ECの採算を考える5ステップ。注文利益、広告上限、黒字件数、ROAS・CPA、改善策の全体像
この順番で見れば、ECの採算はかなり整理できる。まずは主力商品1つで考えるのがコツ。
この記事の執筆者

この記事は、株式会社MADE IN CREW 代表取締役の村田 修平が執筆しています。

MADE IN CREWは、Web制作、LP制作、写真撮影、動画制作、グラフィックデザイン、採用クリエイティブなどを行うクリエイティブ制作会社です。クラウドソーシングサービスにおいて、3年連続で売上全国1位を獲得した実績をもとに、企業のWeb集客、EC・LP制作、問い合わせ導線改善を支援しています。

この記事では、実際にECサイトや購入型LPのご相談を受ける中で感じていること、現場での経験則を踏まえて、実務に近い視点で解説します。

売れているのに赤字になるのは、なぜ?

まず最初に覚えておきたいのは、売上=利益ではないということです。

たとえば、5,000円の商品が売れたとします。5,000円がそのまま会社に残るわけではありません。仮に1注文あたり、販売価格5,000円/商品原価1,800円/送料500円/決済手数料200円/梱包などの費用100円だったとします。

広告費をまだ考えない状態で計算すると、5,000 − 1,800 − 500 − 200 − 100 = 2,400円です。

つまり、この商品の場合、1注文入った時点で広告費や固定費に使えるお金は2,400円あります。この記事では、この「広告費を引く前に1注文から残る金額」を分かりやすく広告前の残額と呼びます。専門的には限界利益などの考え方に近いのですが、まずは「1注文売ったら、広告を除いて何円残る?」と考えればOKです。

ECの売上5000円から原価、送料、手数料、広告費、固定費を引いて利益が残る流れ
売上があっても、いろいろな費用を引くと手元に残る利益は意外と小さい。

まずは「1注文でいくら残るか」を計算しよう

計算方法はシンプルです。

1注文の売上 − 原価 − 送料 − 決済手数料 − 梱包・出荷など注文ごとの費用 = 広告前の残額

先ほどの商品なら、5,000円 − 原価1,800円 − 送料500円 − 決済手数料200円 − その他100円 なので、2,400円です。

ここで大事なのは、商品原価だけを見ないこと。「原価は1,800円だから5,000円で売れば十分利益がある」と考えてしまうと、送料や決済手数料などを見落とすことがあります。送料無料と表示していても、配送会社への送料が消えるわけではありません。クーポンを使えば、表示価格ではなく実際にお客様から受け取る金額で計算する必要があります。

ECの採算を考えるときは、「表示価格」ではなく「実際に1注文からいくら残るか」を見ることが重要です。

1注文の売上から原価、送料、決済手数料、その他費用を引いて広告前残額を計算する例
広告を引く前に、1注文から何円残るかを先に出す。この例では2,400円が広告費や固定費の回収に使えるお金。

広告費はいくらまで使っていい?「CPA」を考える

ここで初めて、広告の数字を入れてみましょう。広告では「CPA」という言葉がよく使われます。CPAをものすごく簡単に言うと、1件の注文を取るために使った広告費です。

たとえば、広告費10万円を使って100件注文が入ったなら、100,000円 ÷ 100件 なので、CPA=1,000円です。

では、先ほどの商品はいくらまで広告費を使えるでしょうか。広告前に残っていたのは2,400円でした。つまり、理屈の上ではCPAが2,400円になると、2,400円 − 広告費2,400円 = 0円です。ここが広告単体で見た、ひとまずの赤字ライン。これを損益分岐CPAと考えます。

CPAの計算式と、広告前残額2400円を上限とした損益分岐CPAの考え方
CPAは「1注文を取るための広告費」。広告前の残額と同じCPAが、注文単位で利益0になるライン。

ただし「CPA2,400円まで使ってOK」ではない

ここが、今回の記事で特に覚えてほしいポイントです。CPA2,400円なら、広告を出した1注文だけを見ると赤字ではありません。でも、利益も残っていません

会社にはこのほかにも、ECカートの月額料金、家賃、人件費、システム利用料、管理費などがあります。つまり、「広告単体で赤字ではない」ことと、「事業として儲かっている」ことは別なのです。単純な「販売価格−原価−送料−手数料」で出す損益分岐CPAは、固定費を回収する前の上限として区別して考えます。

本当に見るべきなのは「利益を残せるCPA」

では、実際にはいくらを目標にすればいいのでしょうか。先ほどの商品で考えてみます。1注文あたり広告前に残る金額は2,400円でした。そして、月100注文を目標/月の固定費40,000円/月に残したい利益100,000円 とします。

固定費4万円と利益10万円。合計14万円を100注文で回収したいので、140,000円 ÷ 100注文 = 1注文あたり1,400円は広告以外のために残す必要があります。したがって、2,400円 − 1,400円 = 1,000円。この場合、目標CPAは1,000円と考えることができます。

数式にすると、目標CPA = 広告前の残額 −(月間固定費+月間目標利益)÷ 計画注文数です。

損益分岐CPA2400円から固定費と目標利益を差し引き、目標CPA1000円を算出する例
注文単位で赤字でなくても、会社として利益が残るとは限らない。固定費と目標利益まで確保して初めて利益が残る。

初心者の方は、まず次の3つを区別すると分かりやすいです。

損益分岐CPA

これ以上広告費を使うと、注文単位ですでに赤字になるライン。今回なら2,400円

許容CPA

固定費や利益目標なども考えて、会社として「ここまでなら使っていい」と決めるライン。

目標CPA

実際の広告運用で目指す数字。今回の計画なら1,000円です。「CPA1,500円です」と聞いただけでは、それが高いか安いかは分かりません。重要なのは、自社ではCPAをいくらまで許容できるのかなのです。

では、この商品は何件売れれば黒字になる?

続いて、「結局、何件売れば黒字なの?」を考えてみましょう。今回、広告前に残る金額2,400円/CPA1,000円 なので、1注文売れたあとに残るのは1,400円です。

固定費が月40,000円なら、40,000円 ÷ 1,400円 = 約28.6件。つまり、29注文目から月間利益がプラスになると考えられます。

この計算ができるだけでも、「月100万円売りたい」という曖昧な目標から、「最低29件。そのうえで利益10万円を狙うなら100件」と、事業計画がかなり具体的になります。

なお、広告費を「1件あたりCPA1,000円」と考える場合と、「広告費10万円を先に全部使う」と考える場合では黒字に必要な件数が変わります。広告予算10万円を先に使う場合は、広告費10万円+固定費4万円=14万円を1注文あたり2,400円で回収するので、140,000 ÷ 2,400 = 約58.3件、つまり59注文程度必要になります。同じ「何件売れば黒字?」でも、広告費の置き方によって答えが変わる点には注意しましょう。

1注文1400円残る条件で固定費4万円を回収するために29件必要となる黒字ライン
1注文で残る額が分かれば、黒字件数も計算できる。「月の黒字ライン」を先に知っておく。

ROAS300%なら成功? 実はそうとは限らない

EC広告ではもうひとつ、よく見る数字があります。ROASです。ROASを簡単に言えば、広告費1円で、何円の売上を作ったかを見る数字です。

たとえば、広告費10万円で広告経由売上50万円なら、500,000 ÷ 100,000 × 100 = ROAS500%。つまり「広告費1円から5円の売上を作った」という意味です。

ROASは広告が効率よく売上を作れているかを見るうえで便利です。ただし、ROASでは分からないことがあります。利益です。ROASには、商品の原価や送料、梱包費、固定費などが直接入っていません。そのため、ROASが高い=儲かっている、とは限りません

ROAS100%と300%の意味。広告費1円で売上1円または3円を作る売上効率の指標
ROASは「売上効率」を見る指標。広告がどれだけ売上を作ったかは分かるが、原価・送料・固定費・最終利益は分からない。

ROAS1000%でも、ほとんど利益が残らないことがある

極端な例を見てみましょう。販売価格10,000円の商品で、原価7,800円/送料500円/決済手数料400円/その他100円/CPA1,000円 だったとします。広告費1,000円で10,000円売れているので、ROASは1000%。ものすごく良い数字に見えます。

しかし、10,000 − 7,800 − 500 − 400 − 100 − 1,000 = 200円しか残りません。さらに固定費を支払う必要があります。だから、「ROAS300%だから成功」「ROAS500%だから優秀」と一律には言えません。必要なROASは、その商品の利益構造によって変わります。

ROAS500%の商品AとROAS1000%の商品Cを比較し、高ROASでも利益が少ない例を示す
高ROAS=必ず儲かる、ではない。見る順番は「ROASで売上効率を見る→最後に利益で判断する」。

利益が残る商品ほど、低いROASでも成立しやすい

広告を出す前に売上の何%が残るかによって、赤字にならないROASは変わります。

  • 広告前に売上の20%が残る商品 → 損益分岐ROASは約500%
  • 30%残る商品 → 約333%
  • 40%残る商品 → 250%
  • 50%残る商品 → 200%
  • 60%残る商品 → 約167%
  • 70%残る商品 → 約143%

たとえば、広告を出す前に売上の20%しか残らない商品なら、ROAS500%程度ないと、その残額を広告費だけで使い切ってしまいます。一方、50%残る商品なら、ROAS200%でも広告単体では損益分岐になります。つまり、「良いROASは何%?」と聞く前に、自分の商品はいくら残るのかを知る必要があるということです。

広告費10万円なら、どれくらい売れる?

ここもEC制作の相談で非常によく出てくる疑問です。結論から言うと、「10万円使えば○万円売れます」とは事前に断言できません。売上は、1クリックにいくらかかるか、広告をクリックした人の何%が買うか、1注文の平均金額はいくらか、によって大きく変わります。

広告費から売上までを簡単につなぐと、クリック数 = 広告費 ÷ CPC(CPCは広告を1回クリックしてもらう費用)、注文数 = クリック数 × 購入率売上 = 注文数 × 客単価。まとめると、売上 = 広告費 ÷ CPC × 購入率 × 客単価 と試算できます。

広告費10万円でCPCと購入率を変えた3ケースの売上・月間利益シミュレーション
売上は「広告費 × 客単価」ではなく、CPCと購入率で大きく変わる。平均値より、自社に必要な購入率を逆算する。

同じ広告費10万円でも結果はこんなに変わる

客単価5,000円/広告前に残る金額2,400円/月固定費40,000円 の商品で、広告費10万円を使ったと仮定します。

  • 厳しいケース(CPC100円・購入率1%):1,000クリック × 1%=10注文。売上50,000円、月間利益は簡易計算で −116,000円
  • 中間ケース(CPC50円・購入率3%):2,000クリック × 3%=60注文。売上300,000円、月間利益は 約4,000円でほぼ損益分岐。
  • 良好なケース(CPC50円・購入率5%):2,000クリック × 5%=100注文。売上500,000円、月間利益は 100,000円

同じ広告費10万円でも、条件によって結果は大きく変わります。だから、「広告費はいくら使えばいい?」だけを考えるのではなく、「自社はどの購入率を達成すれば採算が合う?」と考えた方が実務的です。

「平均CVR」に頼るより、自社に必要な数字を逆算しよう

ネットで調べると「ECの平均CVRは○%」「平均CPAは○円」といった情報が見つかります。もちろん参考にはなりますが、対象国・商材・広告流入か自然流入か・購入以外のCVを含むかなど条件差が大きく、そのまま自社に当てはめられるとは限りません。

なので、「平均CVRが2%らしいから、2%を目標にしよう」ではなく、自社の利益構造から必要な購入率を逆算する方がおすすめです。

たとえば、CPC50円/目標CPA1,000円 なら、50円 ÷ 1,000円 = 5%。つまり、クリックした人の5%に買ってもらえれば、CPA1,000円になるということです。ここまで分かると、「LPをもっと改善する必要があるのか」「今の商品価格では広告販売が厳しいのか」「セット商品を作った方がいいのか」まで考えられるようになります。

平均CVRではなく、CPC50円と目標CPA1000円から必要購入率5%を逆算する方法
大事なのは平均ではなく、自社に必要な購入率。必要CVRが明確になると、LP改善の目標もはっきりする。

利益が足りないなら、CPAを下げる以外にも方法がある

広告が赤字になったとき、「CPAをもっと下げなきゃ」と考える人は多いと思います。もちろん広告改善は重要です。しかし、利益を増やす方法はそれだけではありません。

たとえば、商品価格を上げる/原価を見直す/送料を圧縮する/セット販売を作る/まとめ買いを促す/アップセルする/関連商品をクロスセルする/送料無料ラインを設定する/定期購入につなげる、などがあります。

重要なのは、「広告費を安くする」だけでなく、「広告費をより多く払っても利益が残る商品にする」という考え方です。

CPA改善以外に値上げ、原価改善、送料圧縮、セット販売、アップセル、リピートで利益を改善する方法
広告だけでなく、商品設計を変えると採算は大きく改善する。「高いCPAでも利益が残る商品構造」を作る。

値上げでROASが下がっても、利益が増えることがある

ここは少し意外かもしれません。値上げすると、購入率が下がることがあります。すると、CPAが上がる。ROASも下がる。数字だけ見れば「広告が悪化した」ように見えます。しかし、利益まで見ると逆の結果になることがあります。

仮に値上げ前が、販売価格5,000円/注文数100件/広告費100,000円/CPA1,000円/ROAS500%/月間利益30,000円 だったとします。ここから6,000円に値上げし、購入率が下がって値上げ後が、販売価格6,000円/注文数70件/広告費100,000円/CPA約1,429円/ROAS420% になりました。

CPAは悪化。ROASも500%から420%に低下。注文数も30%減。ところが、1注文から残る金額が増えたことで、月間利益は30,000円 → 52,200円に増えています。つまり、広告指標が悪化しても、経営としては良くなることがあるのです。

だから、値上げの良し悪しを判断するときも、「CPAが上がった」だけではなく、最終的な月間利益がどう変わったかまで比較する必要があります。もちろん、価格を上げすぎて購入数が大幅に減れば利益も下がります。重要なのは、価格と購入数をセットでテストすることです。

値上げでCPAとROASが悪化しても月間利益が3万円から5万2200円へ増える例
広告指標が悪化=失敗、とは限らない。最後は月間利益で判断する。

セット販売は「客単価アップ」だけが目的ではない

セット販売にも同じ考え方が使えます。たとえば単品商品が、販売価格3,000円/広告前に残る金額1,100円/CPA1,000円 だったとします。1注文売っても100円しか残りません。これでは広告を使って販売を伸ばすのがかなり難しい状態です。

そこで2個セットを5,500円で販売するとします。2個なので原価は増え、送料や梱包費も多少増えます。それでも広告前に残る金額が1,100円 → 2,200円まで増えたとします。CPAが1,250円になっても、2,200 − 1,250 = 950円残ります。

ここで大事なのは、「客単価を高くすること」そのものが目的ではないということです。客単価が上がっても、原価や送料、値引きが同じだけ増えれば利益は増えません。見るべきなのは、1注文から広告費に使える金額が増えたかです。

単品販売と2個セットを比較し、広告前残額と許容CPAの余白が増える仕組み
見るべきは、客単価ではなく“広告費に使える余白”が増えたか。

では、商品はいくらで売ればいい?

ここまで理解すると、商品価格も少し違った見方ができます。商品価格を「原価 × 2倍」のように決めるのではなく、必要な費用と利益から逆算します。

たとえば、原価・送料など2,400円/目標CPA1,000円/固定費回収分400円/1注文で残したい利益1,000円/売価に対して4%の決済手数料 だったとします。単純に 2,400+1,000+400+1,000 = 4,800円 ではありません。売価の4%が決済手数料として発生するため、4,800 ÷ 0.96 = 5,000円。つまり必要販売価格は5,000円になります。

一般化すると、必要販売価格 =(金額で決まる注文費用+CPA+固定費回収分+必要利益)÷(1−売価にかかる手数料率)と考えられます。

注文費用、CPA、固定費回収分、必要利益、手数料率から必要販売価格を逆算する式
まず採算上必要な価格を出す。次に、その価格が市場で売れるかを検証する。

ただし、ここで出るのは「この条件なら採算を取るために必要な価格」です。「5,000円ならお客様が買ってくれる」という意味ではありません。最終的には、競合商品はいくらか、お客様が感じる価値はいくらか、5,000円で買う理由をLPで説明できるか、値上げ後に購入率がどう変わるか、も確認する必要があります。価格設定は採算から必要価格を計算 → 市場で成立するか確認 → 実際に販売して検証という順番で考えるのが現実的です。

LTVがあるなら初回赤字でも大丈夫?

化粧品、食品、定期通販などでは、「初回は赤字でも、リピートで回収する」という考え方があります。これは実際に成立するケースがあります。ただし、「たぶんリピートするだろう」という期待だけで広告費を増やすのは危険です。

見るべきなのは売上のLTVではなく、再購入にかかる費用も引いた後の利益です。さらに、何カ月で回収できるのか、本当に何%が再購入しているのか、初月の赤字を支払える現金があるか、まで確認する必要があります。

新しいECでリピート実績がまだないのであれば、将来のLTVを確定値として広告予算を増やすのではなく、まず小さく実測していく方が安全です。

LTVを使って初回赤字を回収する際に、再購入率、回収期間、資金繰りを確認する考え方
LTVが成立することはあるが、“見込み”だけで広告費を増やすのは危険。新規ECは、まず小さく回して実測する。

ECサイト・LPを作る前に確認したい10の数字

ここまでの内容を全部覚える必要はありません。これからECサイトやLPを作るのであれば、まず次の数字を整理してみてください。

  • 1. 販売価格・想定客単価:単品だけでなく、セット販売をするなら平均注文額も。
  • 2. 商品原価:1注文売れたときに発生する仕入れ・製造費。
  • 3. 送料・梱包費:送料無料でも、店舗側の配送費は発生する。
  • 4. 決済・モール手数料:「○%+○円」のような料金体系も確認。
  • 5. 1注文で広告前にいくら残るか:売上から注文連動費を引く。
  • 6. 月間固定費:システム費、固定人件費、家賃など。
  • 7. 月間で残したい利益:売上ではなく「残したい利益」を決める。
  • 8. 月間目標注文数:利益目標を何注文で達成するのか。
  • 9. 許容CPA・目標CPA:1注文獲得にいくらまで使えるのか。
  • 10. 広告予算と仮のCPC・購入率:分からないものは仮定でOK。
ECサイトやLP制作前に確認したい販売価格、原価、送料、手数料、CPAなど10項目
これだけ整理しておくと、制作後の迷いがかなり減る。サイト制作前に“採算の前提”を持っておく。

最初から正確な数字が分からなくても大丈夫

ここまで読むと、「CPCも購入率も分からないから計算できない」と思うかもしれません。ECを始める前なら、それが普通です。最初から正解の数字を知る必要はありません。大切なのは、分かっている数字と、まだ分からない数字を分けることです。

たとえば、販売価格5,000円/原価1,800円/送料500円 までは確定している。CPCと購入率はまだ分からない。なら、CPC50円・100円、購入率1%・3%・5% など複数パターンで計算してみます。そして実際に少額で広告を出し、本当のCPCや購入率に置き換えていく。その方が、ネット上の「平均CPA」や「平均CVR」を信じて大きな予算を使うより、はるかに自社の判断材料になります。

EC制作は「デザイン」だけでなく、売り方から考える

ECサイトやLPを作る前に採算を整理すると、制作内容そのものも変わります。たとえば、単品販売だと広告費をほとんど使えないが、2個セットなら利益が残る、という計算になったとします。それならサイトでも、単品を一番目立たせるのではなく、セット販売を主役にするという判断ができます。

あるいは、利益を出すために客単価8,000円が必要なら、関連商品の提案、アップセル、まとめ買い、送料無料ラインなどをサイト設計に入れる必要があります。つまり、サイトを作ってから「どうやって儲けるか」を考えるのではなく、儲かる条件を考えてからサイトを作る。この順番です。

まとめ|「どう売るか」の前に、「この価格で本当に利益が残るか」を考えよう

ECでは売れるかより先に利益が残るかを考え、主力商品1つで採算を計算する5ステップ
「売れるか」より先に「利益が残るか」を考える。まずは主力商品1つで、価格・原価・送料・広告費を書き出す。

ECでは、商品が売れることと、事業として儲かることは同じではありません。まず確認したいのは、1注文売れたとき、広告を出す前にいくら残るのか。そこから、広告費はいくらまで使えるのか。さらに、固定費を払って目標利益まで残すにはCPAをいくらにする必要があるのかを考えます。

広告運用ではCPAが低い、ROASが高いという数字も重要です。ただ、最終的な判断基準は「月間で利益がいくら残ったか」です。ROASが下がっても値上げによって利益が増える。CPAが上がってもセット販売によって利益が増える。そんなこともあります。

だからこそ、CPAを下げることだけが上手な広告運用ではありません。価格、原価、送料、客単価、セット販売、リピート。商品側の設計を変えることで、「より広告費を払っても利益が残る商品」にするという考え方もあります。

これからECサイトやLPを作るのであれば、まず主力商品を1つだけ選んで、販売価格 − 原価 − 送料 − 手数料 − 広告費 − 固定費を書き出してみてください。完璧な事業計画を作る必要はありません。まず一度数字にしてみる。それだけでも、「この価格で広告を出していいのか」「何件売れば黒字なのか」「値上げやセット販売を検討すべきなのか」を、自分で判断できるようになります。

ECサイトを作る目的は、サイトを完成させることではありません。商品が売れ、その先にきちんと利益が残る仕組みを作ること。そのためにも、制作を始める前に一度だけ、「この商品、本当にこの価格で儲かる?」を計算してみてください。制作の入口でこの前提があるかどうかで、公開後の成果は大きく変わります。EC・LP制作を検討している段階でも、採算設計からご相談いただけます

Contact

ECサイト・LP制作、採算設計からご相談ください

「この価格で広告を出して利益が残るのか」「何件売れば黒字になるのか」——制作の前に、主力商品1つの採算を一緒に整理します。価格・原価・送料・広告費・固定費の逆算から、LP・ECサイトの構成、写真・動画・コピーまで、必要な範囲だけの支援が可能です。数字がまだ固まっていない段階でも、お気軽にご相談ください。

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