SNS運用で最初に決めるべきなのは、何を投稿するかではありません。先に整理すべきなのは、①何のためにSNSを使うのか(目的)、②誰に届けるのか(顧客)、③どのSNSで届けるのか(媒体)、④それを継続できる体制があるのか(運用・計測体制)の4つです。この順番で決めれば、選ぶべき媒体と見るべきKPIは自然と絞られます。
「会社としてSNSを始めた方がいいのは分かっている。でも、何から手をつければいいのか分からない」
「Instagram、TikTok、YouTube、X……結局、自社はどれをやるべきなのか判断できない」
「上司から『とりあえずSNSをやってみよう』と言われたものの、何を成果として報告すればいいのか分からない」
SNS運用を任された企業担当者の方から、こうした相談をいただくことは珍しくありません。
特に初めてSNS担当になった場合、「投稿内容を考えなければ」「フォロワーを増やさなければ」と、いきなり運用方法から考えてしまいがちです。
しかし、SNS運用で最初に決めるべきなのは、何を投稿するかではありません。
先に整理すべきなのは、次の4つです。
- 何のためにSNSを使うのか(目的)
- 誰に届けるのか(顧客)
- どのSNSで届けるのか(媒体)
- それを継続できる体制があるのか(運用・計測体制)
ここが曖昧なまま投稿を始めると、半年後に「フォロワーは増えたけれど、結局これって会社に何の効果があったの?」という状態になりかねません。
この記事では、これからSNS集客に取り組む企業担当者の方に向けて、運用開始前に何をどの順番で決めればいいのかを解説します。
企業のSNS運用は本当に必要?
「うちの顧客は若者ではないから、SNSはそこまで必要ないのでは?」
そう感じている担当者の方もいるかもしれません。しかし現在の利用状況を見ると、「SNS=若者向け」と一括りにするのは難しくなっています。
総務省が2026年6月に公表した調査では、13〜79歳のSNS利用率は次の通りでした。
| SNS | 利用率 |
|---|---|
| LINE | 92.9% |
| YouTube | 81.5% |
| 54.8% | |
| X | 44.7% |
| TikTok | 36.7% |
| 27.0% |
※総務省・2025年12月調査。13〜79歳1,800人を対象。MAUではなく「調査回答者における利用率」です。
いずれも同じ調査条件による利用率なので、媒体規模を比較する際の参考になります。
さらに、SNSは単なる暇つぶしや交流の場ではなくなっています。総務省の2024年調査では、SNSを利用する目的として64.0%が「知りたいことについて情報を探す」と回答しています。SNSは、生活者にとって情報収集の場にもなっているということです。
実際の購買行動を思い浮かべてみてください。
商品をSNSで知り、その場で口コミを確認し、Googleで企業名を検索し、公式サイトやECを見て購入する。飲食店をInstagramで見つけ、口コミを確認してからGoogleマップで場所を調べ、予約する。
このように、現在の購買行動はSNSだけで完結するというより、SNS、Google、公式サイト、EC、店舗などを行き来しながら意思決定が進みます。
だから企業にとって重要なのは、「SNSをやるか、やらないか」ではなく、「顧客の購買行動の中でSNSをどう使うか」を考えることです。SNSと合わせて受け皿となるWebサイト側の改善もセットで考えたい方は、問い合わせが増えるWebサイトの改善ポイントを解説した記事も参考にしてください。
Instagramはもう「20代女性だけのSNS」ではない
例えばInstagramに対して、「若い女性向けのサービス」というイメージを持っている方もいると思います。
確かに女性利用者はやや多いものの、現在は利用年代がかなり広がっています。2024年の総務省調査では、Instagramは10〜30代で70%を超えるだけでなく、40代・50代でも利用率が50%を超えています。
YouTubeに至っては、10〜40代で90%を超え、50代でも83.0%、60代でも71.2%が利用しています。
つまり、「ターゲットが40代だからInstagramは違う」「50代向けだからSNSは必要ない」と年齢だけで判断するのは危険です。見るべきなのは年齢そのものではなく、その顧客がどこで、どんな情報を探しているかです。
企業のSNS運用は何から始める?最初に決める4つのこと
ここからが本題です。
初めてSNSを担当すると、「InstagramとTikTok、どちらを始めるべき?」「週何回投稿すればいい?」「リールを作った方がいい?」という疑問が先に出てくると思います。
ですが、その前に決めることがあります。SNS運用は、次の順番で考えると整理しやすくなります。
目的 → 顧客 → 媒体 → 運用・計測体制
媒体や投稿内容は、この流れの3番目以降です。順番に見ていきましょう。
1.SNSを使って何を達成したいのか決める
一番最初に決めるのが、SNS運用の目的です。
ここが曖昧なまま始めると、「フォロワーを増やそう」「再生回数を伸ばそう」「いいねを増やそう」と、分かりやすい数字だけを追いかけやすくなります。
フォロワー数や再生数を見ること自体が悪いわけではありません。問題は、それが会社の目的とどうつながっているのか分からない状態で追い続けることです。
目的が決まれば、見るべき数字(KPI)も決まります。
例えば、目的が「認知を増やす」なら、リーチ、インプレッション、動画視聴、指名検索数など。「問い合わせを増やす」なら、プロフィール閲覧に加えて、Webサイトへの遷移数、サービスページ閲覧数、問い合わせ開始数、CV数まで。「リピート購入」なら、LINE登録数、クーポン利用、再購入率、再来店率などです。
フォロワー数や「いいね」はあくまで補助的な指標です。認知・比較・問い合わせ・売上・継続率とのつながりがなければ、事業成果とは呼べません。
つまり、SNSの数字を伸ばすのではなく、事業目標につながる数字を伸ばす。これがKGI・KPIを設定する目的です。
フォロワー1万人を目標にする前に考えること
例えば、フォロワーが1万人になったとしても、そのほとんどが自社の商品を購入する可能性のない人だったらどうでしょうか。
反対に、フォロワーが3,000人でも、その中に自社の見込み顧客が多く存在し、毎月問い合わせが発生しているのであれば、企業としてはこちらの方が価値が高い可能性があります。
「何人にフォローされたか」より、「誰に届き、その後どんな行動につながったか」。ここを見られる状態を先に作っておくと、上司への報告や社内説明もしやすくなります。
2.誰に届けるのか具体化する
目的が決まったら、次に考えるのがターゲット・ペルソナです。
「ペルソナを細かくすると、届ける相手を狭めすぎるのでは?」と思う方もいるかもしれません。
ですが、ペルソナを設定する一番の目的は、架空の人物を細かく作り込むことではありません。SNS運用に関わるメンバーの判断基準を揃えることです。
例えば「30代の女性」だけでは、まだかなり幅があります。
仕事と子育てを両立していて、「とにかく時間が足りない」と感じている人なのか。ある程度自分の時間があり、「生活をもっと楽しみたい」と考えている人なのか。同じ30代女性でも、響く言葉は変わります。
前者なら「毎日の家事を10分短縮する」という訴求が刺さるかもしれません。後者なら「いつもの暮らしを少し豊かにする」という見せ方の方が響くかもしれません。
ペルソナを共有していないと、企画担当者は「便利さ」を訴求し、デザイナーは「高級感」を出し、投稿担当者は「親しみやすさ」を重視する、といったズレが起きます。
逆に「誰の、どんな場面の、どんな課題を解決する投稿なのか」が共有されていれば、企画、コピー、デザイン、動画、CTAの判断がしやすくなります。
ただし、「38歳・東京都在住・趣味はヨガ・好きな飲み物はコーヒー」のように、購買判断と関係のない設定まで細かく作る必要はありません。
整理すべきなのは、次の5つです。
- 悩み(何に困っているか)
- 購入理由(なぜ買うのか)
- 不安(何が購入を止めているか)
- 情報収集方法(どこで情報を探すか)
- 意思決定条件(何が決め手になるか)
3.その顧客に合ったSNSを選ぶ
目的と顧客が決まって、初めて媒体を選びます。
「Instagramが流行っているから」「TikTokが伸びているから」という理由だけで決めないことがポイントです。各SNSは利用者層だけでなく、購買行動の中で担える役割も異なります。
| 媒体 | 特徴 | 購買行動での主な役割 |
|---|---|---|
| 写真・リール・ストーリーズで視覚的に伝えやすい | 商品発見、事例、店舗、ブランド形成 | |
| TikTok | 推薦型の短尺動画で新しい情報に出会いやすい | 認知拡大、実演、レビュー、採用 |
| YouTube | 長尺動画と検索性を活かせる | 商品理解、比較、How To、BtoB、導入事例 |
| X | 速報性・会話・情報拡散との相性が良い | 広報、業界情報、イベント、口コミ |
| 30〜50代を含む比較的高い年代にも利用者がいる | BtoB、経営者層、地域、コミュニティ | |
| LINE | 一度接点を持ったユーザーへ直接届けやすい | 再購入、予約、来店、CRM |
「どれが一番優れたSNSか」ではなく、自社の目的と顧客に対してどれが一番適しているか。この視点で選びます。
Instagram|商品やサービスを「見せて伝える」
Instagramは、写真、リール、ストーリーズなどを使いながら、商品やサービスの世界観や利用シーンを伝えやすい媒体です。
美容、ファッション、飲食、旅行、住宅、インテリアなど、「完成した状態」や「利用したイメージ」が意思決定に影響しやすい商材と相性があります。
ただし、Instagramを使えば売れる、という意味ではありません。商品の魅力だけでなく、保存したくなる情報、比較材料、プロフィール、Webサイト、予約・購入導線まで設計して初めて成果につながります。
TikTok|まだ自社を知らない人への「発見」を作る
TikTokは、フォローしているアカウントだけでなく、ユーザーの反応などをもとに「おすすめ」へコンテンツが表示される推薦型の仕組みが特徴です。そのため、既存フォロワー以外へコンテンツが届く機会があります。
2025年にTikTokが公表した調査では、直近1年間にTikTokを利用した5,791人のうち33.9%が「TikTok動画を見た後に商品・サービスを購入した経験がある」と回答しています。ただし、これは日本人全体ではなくTikTok利用者を対象とした自己申告調査です。
TikTokを活用する場合は、「商品を宣伝する動画を作る」という発想より、「ターゲットが思わず見てしまう情報の中に、自社の商品をどう組み込むか」と考える方が成果につながりやすくなります。採用文脈での活用を考えている方は、採用サイト・求人媒体用の写真撮影について解説した記事も参考になります。
YouTube|検討中の顧客へ判断材料を渡す
YouTubeは幅広い年代に使われています。
特に、高単価商品やBtoBサービスのように、「知った瞬間に購入する」のではなく、理解・比較・検討に時間がかかる商品との相性があります。製品の使い方、専門知識、比較、導入事例、顧客インタビュー、FAQ、ウェビナーなどです。
YouTubeは「バズらせる場所」というより、検討中の顧客に判断材料を渡す場所として使えるケースがあります。
X|リアルタイムな情報や企業の考え方を届ける
Xは特に20代で利用率が高く、30代にも広く浸透しています。
リアルタイム性が高いため、ニュース、イベント、業界情報、キャンペーン、障害情報、企業としての見解などとの相性があります。ビジュアルで魅せることより、継続的に知識や考え方を発信できる企業に向いています。
Facebook|BtoBや中高年層では今も選択肢になる
Facebookの全体利用率は他媒体より低くなっていますが、実名登録が基本で、ビジネス層や中高年層の利用が根強い媒体です。
そのため、BtoB、士業、地域ビジネス、経営者層、既存コミュニティなど、ターゲットによっては現在も有力な選択肢になります。
「Facebookは古いからやらない」と媒体名だけで判断するのも、「とりあえずFacebookもやる」と考えるのも、どちらも避けた方がいいでしょう。
LINE|認知より「その後の関係」をつくる
LINEは2026年3月末時点で国内MAU1億人とされています。
他のSNSと少し違うのは、新しい人に知ってもらうことより、一度接点を持った人との関係を継続する用途に強いという点です。
例えば、こんな導線です。
Instagramで店舗を知る → LINEを友だち追加する → クーポンを受け取る → 来店する → 再度LINEから情報を受け取る → 再来店する
SNSは一つの媒体だけですべてを解決する必要はありません。媒体ごとの役割を分けて組み合わせるという考え方も持っておきましょう。
4.その運用、本当に社内で続けられるか?
ここは、SNS運用を始める前に意外と見落とされるポイントです。
例えば「TikTokがターゲットに合っている」と分かったとしても、実際に運用するには次の工程を回し続ける必要があります。
企画 → 出演者の確保 → 撮影 → 編集 → 社内確認・承認 → 投稿 → 分析 → 改善
毎週動画を企画できるのか。出演者を確保できるのか。撮影・編集の時間を取れるのか。社内確認を短期間で回せるのか。投稿後の分析までできるのか。
TikTokやリールがターゲットに合っていても、出演・撮影・編集・承認を継続できなければ運用は蓄積しません。逆に、専門知識や事例が豊富な企業なら、YouTubeやカルーセル投稿などの方が強みを活かせる場合があります。
つまり媒体選定では、「顧客がいるか」だけでなく、「自社が勝てるコンテンツを継続的に作れるか」も条件に入れる必要があります。
SNS運用でよくある失敗は「投稿」より前に起きている
SNS運用がうまくいかないと、「投稿頻度が足りなかったのでは?」「クリエイティブが悪かった?」「もっとフォロワーを増やさないと」と考えがちです。
しかし実際には、投稿を始める前の設計段階に原因があるケースが少なくありません。
- 目的が決まっていない
- ターゲットが曖昧なまま進んでいる
- その媒体を選んだ理由を説明できない
- KPIがフォロワー数しかない
- 制作体制がなく継続できない
- 分析はしているが、次の改善につながっていない
心当たりがある項目はなかったでしょうか。これらはすべて、投稿の質を上げる前に、設計を整理すれば防げるものです。
SNS運用は「一番伸びるSNS」ではなく「一番勝ちやすい場所」を選ぶ
ここまでをまとめると、SNS運用で最初に決めるべきなのは、目的、顧客、媒体、運用・計測体制の4つです。
「今はTikTokが伸びているらしい」「競合がInstagramを始めた」という理由だけでSNSを選ぶ必要はありません。
自社が達成したい目的に対して、どこにターゲットがいるのか。その人は何を知りたいのか。どんなコンテンツなら信頼してもらえるのか。どこで比較されるのか。そのコンテンツを自社で継続して作れるのか。
そこまで考えた上で、自社にとって最も勝ちやすい土俵を選ぶ。これがSNS集客の出発点です。検索経由の集客を含めたホームページ側の戦略は、AI時代に生き残るSEO対策を解説した記事で詳しく整理しています。
SNS運用は内製できる?外注した方がいい?8項目でチェック
「考えることが多いな……」と感じた方もいるかもしれません。
そこで、自社の現在地を確認できるチェックリストを用意しました。YES/NOで答えてみてください。
| No. | チェック項目 |
|---|---|
| 1 | SNSを使って達成したい事業目標が明確 |
| 2 | 誰に届けるのか社内で共通認識を持てている |
| 3 | そのSNSを選んだ理由を説明できる |
| 4 | フォロワー数以外のKPIを決めている |
| 5 | 継続的に投稿企画を用意できる |
| 6 | 撮影・デザイン・動画編集などを継続できる体制がある |
| 7 | 社内確認・承認をスムーズに回せる |
| 8 | データを分析して次の改善につなげられる |
※この診断は、あくまで体制整理の目安です。YESの数だけで内製・外注を断定するものではなく、商材や社内リソースによって最適な形は変わります。
自社だけで決めきれない場合は、「運用代行」より先に設計から相談する
チェックの結果、「自社に何が足りていないのか、正直よく分からない」という方もいると思います。
SNS運用には、投稿制作だけでなく、戦略設計、KPI設定、媒体選定、企画、制作、分析、社内承認など複数の業務があります。だからといって、最初からすべてを外注する必要はありません。
自社で企画できるなら、制作だけ外注する。制作できるなら、最初の媒体選定とKPI設計だけ支援を受ける。社内担当者を育てたいなら、伴走型で運用する。企業によって必要な支援は違います。
MADE IN CREWでは、投稿制作だけでなく、
- そもそも自社はSNSをやるべきなのか
- どの媒体を選ぶべきなのか
- 何をKPIにすればいいのか
- どこまで内製し、どこから外部に任せるべきなのか
という運用開始前の整理から相談を受けています。SNS戦略設計、媒体選定、ターゲット整理、KPI設計、企画、写真撮影、動画制作、デザイン制作まで、必要な範囲だけの支援も可能です。
すでにSNSを運用していて、「投稿は続けているが、成果につながっているのか分からない」という場合も、現在の運用状況からの見直しができます。
SNSを始める前の段階でも、お気軽にご相談ください。
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